どうも、三村です。
今回は、所得控除の一つである「医療費控除」について詳しく解説していきます。
会社員の方であれば、年末になると会社から年末調整に必要な書類の提出を求められるので、「あ~、あの面倒くさい手続きのやつね」と思い出して頂けるのではないかと思います。
知らないだけで損している可能性大なので、ぜひ目を通してみてください。
ちなみに前回の記事では、手続きだけでできる控除関係の節税対策として、税額控除である住宅ローン減税についてのお話をしました。[kanren postid=”370″]
税額控除は「実際に支払う税金を少なくする」ものでしたが、今回からご紹介する所得控除は、実際に支払う税金を計算する際の「基準となる金額を減らす」ものです。
税額控除は節税対策としてはメリットは大きいですが、住宅ローンを検討している人以外にはあまり関係のない話ですよね。
一方、所得控除は医療費控除や保険料控除、配偶者控除など多くの人に関係するためより身近に感じることができるでしょう。
ではさっそくどうぞ!
知らなかったではもったいない!医療費控除にまつわる5つの勘違い
まずはじめに、あなたはどれくらい医療費控除のことを理解しているでしょうか?
「年間の医療費が10万円を超えたら医療費控除を受けられる」
「保険が適用される医療費だけしかダメなんでしょ?」
そんな風に思っているのではないでしょうか?
ですが、これらのイメージは誤解です!!
引用元 : https://matome.naver.jp/
このような医療費控除に対する勘違いについて、主な5つをこれからご紹介していきたいと思います。
勘違い1:10万円を超えないと医療費控除は受けられない
多くの方が勘違いしているのが、
「年間の医療費が10万円を超えないと医療費控除は受けられない」
ということですが、実はそれは勘違いです!
なぜなら、医療費が10万円以下の場合でも年間所得額が200万円未満なら医療費控除を受けられるからです。
引用元 : http://comisoku.com/
いやいや、何を言っているかわからないという方のためにもう少し詳しく説明していきますね。
医療費控除の金額は以下の計算式で求めることができます。
医療費控除=[1年間の医療費の合計]-[保険金等による補てん額]-10万円※※年間所得額が200万未満の場合は年間所得額の5%
この「※」の部分がポイントで、
年間の所得金額(給与金額ではありません)が200万未満の場合、
正味の医療費が年間所得額の5%以上であれば医療費控除を受けられるということです。
もっとイメージしやすいように具体例を見ていきましょう。
・1年間の医療費の合計=9万円
・保険金等による補てん額=なし
・夫の給与収入600万円(年間所得426万円)
・妻の給与収入125万円(年間所得60万円)
この場合、夫の所得は200万円を超えているので10万円控除で計算するため医療費控除を受けることはできません。
一方、妻の所得は200万円未満なので年間所得額の5%控除で計算するため、
9万円-(60万円×5%)=6万円
となって、6万円を医療費控除として確定申告することができるのです。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]医療費控除は所得が多い方が必ず申請しないといけないものではありません。
医療費が10万円を超えていない場合でも、条件によっては医療費控除が受けられる可能性は十分にあるということです![/voice]
勘違い2:通院に掛かった交通費は医療費控除の対象外
通院のための交通費は「医療費ではないので医療費控除の対象にならない」と思っていませんか?
実は通院のための交通費も医療費控除の対象になります。
子どもの通院など付き添いが必要な場合は、付き添いの交通費も対象になります。
電車やバスなどの公共交通機関の料金は領収書がなくても大丈夫!
医療機関までの交通費を調べて、通院回数を掛けて計算すれば問題ありません。
自家用車による通院のガソリン代や駐車場代は認められませんが、タクシー代は症状等により対象になる場合があります。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]タクシー代は領収書が必要になりますので、しっかり保管しておきましょう![/voice]
勘違い3:保険が適用されない医療費は医療費控除の対象外
健康保険が適用されないような医療費は医療費控除の対象とならないと思っている方もいらっしゃいますが、
医療費控除の対象となる医療費が「治療目的」かどうかがポイントです。
健康保険が適用されるかどうかは問題ではありません!
治療を目的とした自由診療や先進医療も、一般的な基準よりも極端に高くなければ医療費控除の対象となります。
例えば、子どもの成長を阻害しないための歯列矯正や、治療目的で行われる大人の歯列矯正も医療費控除の対象となります。
しかし、美容目的で行われる歯列矯正は対象になりません。
また、視力回復を目的とした治療であるレーシック手術は医療費控除の対象になりますが、
メガネやコンタクトレンズは視力を回復させる治療ではないので、医療費控除の対象になりません。
さらに、市販薬も治療目的の医薬品であれば医療費控除の対象となることを覚えておきましょう。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]薬局で風邪薬を購入したり、肩こりの治療のために湿布薬を購入した場合も医療費控除の対象となるので、レシートや領収書は捨てないように![/voice]
勘違い4:扶養に入っていないと医療費控除を受けられない
医療費控除を受けることができるのは、
「自分または自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合」です。
夫婦ともに収入があっても医療費を分ける必要はありませんし、税制上の扶養に入っているかどうかも関係ありません。
妻が夫の扶養に入っていない場合でも、妻の医療費を夫の医療費控除にすることもできます。
また、生計を一にするとは同居という意味ではありません。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]単身赴任や一人暮らしをしている子どもの医療費など、別居の家族であっても生計が一つであれば合算して医療費控除の申告ができます。[/voice]
勘違い5:保険の給付金を受け取ったら医療費控除を受けられない
受け取った保険金は医療費の合計から控除する、と思っている方も多いかもしれませんが、
受け取った保険金を控除するのは「給付の目的となった医療費のみ」です。
つまり、その他の医療費からは控除する必要はない、ということです。
まだちょっとわかりにくいかもしれませんので、実際に具体例を出して見ていきましょう。
・妻の入院にかかった医療費8万円
・妻の入院以外にかかった医療費の合計額12万円
・妻の入院に対する保険給付金14万円
・夫の給与収入600万円(年間所得426万円)
・妻は専業主婦
上記の場合、医療費控除の対象となる金額はいくらでしょうか?
※「8万円-14万円」は-6万円ではなく0円
正解は2.の「2万円」です。
入院に対する保険給付金は実際に入院に掛かった費用のみ対象となり、入院以外に掛かった分についてはマイナスする必要はありません。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]すべての医療費の合計から保険給付金を引いてしまい、
医療費控除の条件を満たしていないと誤解している方も多いので要注意![/voice]
医療費控除とは?基本をわかりやすく解説!
ここまで医療費控除にまつわる主な5つの勘違いポイントをご紹介してきました。
ところで、あなたは医療費控除についてどれくらい理解できているでしょうか?
実はよくわかっていないという方も多いのでは?
そこで、ここからは医療費控除の基本についてお話していきたいと思います。
医療費控除とは
医療費控除とは1月1日〜12月31日までに負担した医療費が10万円を超えた場合に、
超えた分については所得税と住民税を減らすことができる制度です。
ただし、医療費控除は税額控除ではなく所得控除ですので、医療費控除の金額がそのまま所得税・住民税を減らすのではなく、
所得税などを計算する際の基準となる金額を減らすものなので誤解のないように。
なお、ここでいう10万円とは自分だけでなく生計を一にする配偶者や親族などとも合算することができます。
ちなみに、単身赴任や一人暮らしをしている子どもなど、離れて暮らしているような場合でも問題ありません。
医療費控除の対象になるもの
医療費控除の対象となる医療費には以下のようなものがあります。
- 入院代
- 通院に掛かった交通費(電車やバスなど)
- 妊婦の定期検診
- 子供の歯の矯正にかかった費用
- レーシック手術費
- 歯のインプラント治療費
上記を見て頂ければわかるように、目的が医療のものは医療費控除の対象になるということですね。
医療費控除の対象にならないもの
次に、医療費控除の対象とならない医療費には以下のようなものがあります。
- 病気の予防や健康増進のためのサプリメントなど
- 通院に掛かったガソリン代、駐車場代
- 見舞いのための交通費
- 美容のためのシミ取りなど
- メガネやコンタクトレンズなど
つまり、根本から治すことを目的とした医療ではなく、一時的なものは医療費控除の対象にはならないということですね。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]メガネやコンタクトレンズなどはわかりやすい例ですよね。[/voice]
医療費控除の計算方法
医療費控除の算出は以下の計算式で出すことができます。
医療費控除=[1年間の医療費の合計]-[保険金等による補てん額]-10万円※※年間所得額が200万未満の場合は年間所得額の5%
ちょっとわかりづらいと思いますので、具体例を出してみましょう。
・1年間の医療費の合計=30万円
・保険金等による補てん額=18万円
・夫の給与収入600万円(年間所得426万円)
・妻の給与収入125万円(年間所得60万円)
「夫が医療費控除の確定申告をした場合(所得が200万円以上)」
30万円-18万円-10万円=2万円
「妻が医療費控除の確定申告をした場合(所得が200万円未満)」
30万円-18万円-(60万円×5%)=9万円
基本的には年収が高い方で申告する方がおトクになるケースが多いですが、
Cさんファミリーのようにどちらかの所得が200万円未満で5%控除を利用できる場合には、
所得が少ない方で申告する方がおトクになることもあります。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]夫婦で共働きの場合はどちらが節税効果が高いかを事前に計算して、トクする方で申告しましょう![/voice]
医療費控除の申請方法
ここまで説明してきたように、医療費控除は所得税・住民税を計算する際に控除する所得控除という制度であるため、医療費控除を受けるには確定申告が必要となります。
前回お話した住宅ローン控除は一年目のみ自分で確定申告する必要があるものの、
二年目以降は会社の年末調整で行えるものでしたよね。
一方、医療費控除については会社での年末調整はできないため、毎年自分自身で確定申告する必要があります。
ちょっと面倒ですが、そういうものだと割り切りましょう。
なお、医療費控除を確定申告するにあたって以下の書類等が必要になります。
- 確定申告書申請用紙
- 医療費に関わる領収書やレシート
- 交通費の領収書、または正確に記録しているもの
- 源泉徴収票
- 還付金を振り込んでもらうための銀行口座の通帳、もしくは口座番号情報
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]確定申告の手順については前回の記事でも触れていますので今回は割愛させて頂きますが、領収書やレシートなどを事前にまとめておきさえすれば、大して面倒ではありませんのでご安心を。[/voice]
ついにはじまった!新・医療費控除「スイッチOTC薬控除」って何?
2017年1月からスタートした「スイッチOTC薬控除」(セルフメディケーション税制)とは
1年間に薬局などで購入した市販薬が1万2000円を超えた場合、1万2000円を超えた分を所得から控除できるというものです。
病院に行かなくても済むような軽い身体の不調を市販薬などにより自分でケアすることで生活の質を改善すると同時に、
国の財政を圧迫している医療費の適正化にもつなげようというのが狙いなようです。
スイッチOTC薬控除の対象
スイッチOTC薬控除を受けることができる人は、
会社の健康診断や特定健康診査、予防接種、健康検査、がん検診などにより健康管理に努めている方とされています。
「健康管理に努めている」というのがあいまいな表現ですが、まぁ、普通に健康診断を受けている方なら問題ありません。
また、薬局などの市販の医薬品がすべて対象になっているわけではないので要注意です。
スイッチOTC薬控除の対象となる医薬品は厚生労働省のWebサイトに掲載されている医薬品が対象となります。
なお、スイッチOTC薬控除の対象となる医薬品の多くには以下のマークが記載されています。
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]実際、私も先日マツキヨでこのマークが入った頭痛薬を買いましたが、確かにマークが付いているものと付いていないものがありました。
ちなみにマークが付いている薬は若干高めの価格になっていましたね。[/voice]
スイッチOTC薬控除は従来の医療費控除と新・医療費控除の併用ができない
医療費控除には従来からある「医療費控除」と新たに始まった「スイッチOTC薬控除」がありますが、これらは併用することができず、どちらかしか選べません。
1年間の医療費が10万円を超える場合など医療費控除が利用できる場合には、「医療費控除」と「スイッチOTC薬控除」のどちらを選んだ方が良いのかをよく考えて決めるようにしましょう!
スイッチOTC薬控除を受けるには確定申告が必要
上で述べた通り、医療費控除を受けるためには確定申告をする必要がありますが、
スイッチOTC薬控除を受ける場合にもやはり確定申告する必要があります。
スイッチOTC薬控除を受けるにあたって大切なのが、
ドラッグストアや薬局で市販薬を購入した際に受け取ったレシートや領収書は必ず捨てずに保管しておくこと!
[voice icon=”https://fali.jp/wp-content/uploads/2018/02/mimurakeisuke1.png” name=”三村” type=”l”]もし、従来の医療費控除制度を選ぶ場合であっても、治療のために購入した市販薬の購入代金は医療費の中に含めることができるので無駄にはなりません!
面倒に感じるかもしれませんが、レシートや領収書は確実にもらい保管しておくようにしましょう! [/voice]
医療費控除で節税対策!~今回のまとめ~
今回は所得控除の一つである、医療費控除について見てきましたがいかがでしたか?
医療費控除は健康という身近なテーマでありながら、医療費が10万円以上でないといけないなど多くの方が勘違いしているのが現状です。
今年は医療費がたくさん掛かったなぁという場合など、医療費控除を受けられる状況であるなら節税対策としてぜひ医療費控除を受けるようにしましょう!